ユウジの字はちょっと癖字  三年五組、。それが俺の恋した相手だった。ケン坊が言っていたあの教室にいったことのある奴、というのはだったらしい。あの教室は資料室だった。けどそんなことはどうでもよくて。俺はいま、一枚のルーズリーフの前でなにもできずに固まっていた。

(なにかいたらええねん……)

 名前とクラスと番号を調べてくれたのは小春だった。どうしたらええ、と嘆く俺にラブレターでも書いたらええんじゃない? と言ってくれたのも小春だった。けど内容は自分で考えろ、ということで。

(なんもかくことあらへんやん)

 考えてみればを見たのは二回だけ(二度目は小春と一緒にケン坊のクラスへいったとき。教室の隅っこにいるのを見かけてひどく驚いた)。相手は俺のことを知らないかもしれない。知っていても気味悪がられるかもしれない。
 それでもこの気持ちを隠しておくことなんてできなかった。この感情が恋だとしってから、もうに好きだといいたくてたまらなかった。

 真っ白のルーズリーフ。便箋と封筒なんて持っていないから。そのはじっこに、好きです。とだけ書き殴った。適当に折りたたんで、あ、そうだ名前。と思い、適当なところに三年五組二十二番一氏ユウジ、と書いて、その手紙を持って立ち上がる。直接渡すなんてことはできないから、下駄箱へいれるつもりだ。

 下駄箱に着いたとき、その手紙は俺の手の中でしわくちゃになるまでにぎりしめられていた。

きみにかいたラブレター