さらっとプロポーズする千歳
 携帯を開いてなにかを確認したが「あーやっぱり」と呟いた。まだ少し肌寒くて俺はポケットに手をつっこんだ。春はあけぼの、だし、夜明けでもみたいよね、と言いだしたのはだった。確かそれをいったのは昨日の夕方ごろ。めずらしく一日中家にいた俺にそうはいってきた。そのあとてきとうに時間をつぶして、俺の家にきて風呂はいってちょっと寝て、また外にでた時はまだ真っ暗だったのに。

「なに見とっとー?」
「んー、親からのメール、とか」

 無断で来たから怒ってるみたい、と困った笑顔で言う。もう大人なんだからいいじゃん、と呟くの手をとって歩き出した。目的地はすぐそこ。

「千歳―」
「んあー」
「夜明けってもうすぐ?」
「そうたいねー」
「楽しみ」

 が腕にからみついてきてすこし歩きにくい。それでも気にしないで歩き続けた。ひと気のない道路の先にあるのは小高い丘。そこからは俺達の住む町が見渡せる。
 だんだんと明るくなっていく途中でそこにたどり着いた。俺達のほかに人はいない。は俺の手から離れて丘の先までいった。その目の前では、今まさに朝日が昇ろうとしているようだった。

「きれい」

 はすこし涙ぐんでいた。つれてきてよかったな、と思う。不意に目があったから視界を塞ぐようにしてキスしてやった。
 そうしたらが嬉しそうに笑って、このままずっと一緒にいれたらなあ、と思っていたら自然に言葉がこぼれていた。

「けっこん、せん?」

 一瞬びっくりしたような顔をしたは、それでもまた嬉しそうに笑って、「じゃあ今度からは名前で呼んでね」といった。

「あーやっぱり」