「おはよー」 「あら、今日はぎりぎりやねえ」 教室に駆け込むとチャイムのなる五秒ほど前だった。一番に声を掛けてくれたのは仲良しの小春ちゃん。席も前後なのでよく話す。席についてすこし乱れていた呼吸を整えているとなにやら視線を感じた。なんだろ、と思ってふりかえると一氏と目が合う。あった瞬間にそらされたけれど。 話しかけようとしたら先生が入ってきてしまった。まあ気にしないでいいか。と思って前を向く。HR中、あたしの背中にはずっと視線が突き刺さっていた。 「ねえ一氏」 お昼休みになって、ようやく一氏に話しかけることができた。あれから全部の授業の間視線を感じていて集中できなかった。今日の一氏はなんか、へん。あたしの方を見てるかと思えば急に眼をそらすし、休み時間に話しかけようとしたら逃げられてしまった。今になってようやく話せたけれど、あいかわらず一氏はあたしを見ようとしない。もしかしてあたしなんかした? そういおうとした時、先に一氏が口を開いた。 「……返事、決まったんか」 「え?」 「せやから、あの返事や」 「あの、ってなんの?」 あたしがそう言うと一氏は驚いたような顔であたしをみる。あ、やっとこっち向いた。 「おま……。あー、けどあれやったらわからんかもやしな」 「うん?」 「なら簡潔にいうで。お前、俺とつきあえ」 「……へ? つきあう、って、彼氏彼女ってこと」 「あああ、あんまりでかい声でいうなや!! はいかいいえだけでええ!」 「ええー……、まあ、うん……?」 「なんで疑問系なん」 「だって、一氏って小春ちゃんが好きなんじゃないの」 「確かにそうやけど」 「だったら言う相手違くない?」 「……お前、あれ見てまでそれゆってんか!」 「だからあれってなによ!」 「ラブレターやろ!」 らぶれたー? そう言われて朝からポケットにいれっぱなしだったルーズリーフをとりだした。それを見て一氏が「それや、それ」という。ポケットにいれっぱなしだったせいでさらにくしゃくしゃになったそれを開くと、そこには「好きです」とだけちいさく書かれていた。 「え、なにこれ一氏の?」 「あたりまえや」 「……名前書いてないんだけど」 「……! ってゆうかお前、それ読んでへんかったんか!」 「あ、うん。時間ぎりぎりだったし……っていうかさ、」 あたしで、いいの? と聞いたら一氏は、ほんとにちいさい消えてしまいそうな声で「おまえがええんや」といった。(もちろん聞き逃さなかった) 「っていうかさ、」 |