デレ財前 膝の上に転がっている顔はひどく幸せそうだ。光がこんな表情を見せるのはめずらしい。今日、いきなり家にくるなり人の膝の上で寝始めた。枕に移そうかとも思ったけれど腕がしっかりと腰に巻きついていて離れない。仕方がないからその体制のまま勉強をした。一応わたしは中学三年、受験生なのだ。受験なんてまだ先の話な光とは違う。まあこの間受けた模試でも合格するだろう、という判定を受けていたのでそこまで焦る必要はないのだが。けれど周りがみんな勉強しているこの環境の中でひとり勉強しないというのは気が引けて、なんとなく勉強している。

「ひかる、くすぐったい」

 いつのまにか起きていた光に脇腹をくすぐられた。逃げようとしても光はそれをさせない。「先輩、かまってほしい」と、光が言うからもう勉強なんてできなくなってしまった。
 諦めてシャーペンを置いて光の髪をなでる。短い髪はわたしの手に突き刺さってすこしちくちくした。もう片方の手を光の頬に置くと満足そうに眼を細める。猫みたいだ、なんて思って笑うと「なにニヤニヤしてんすか」とつっこまれた。

「あーあ、これで高校落ちちゃったら光のせいだからね」
「そーッスね」
「光はそれでいいのー?」

 頬に置いていた手でやわらかいそれをちょっと抓ると手を押さえられた。視線があう。そうしたら光はニッと笑って、「ええんじゃないっすか」とだけいった。


「いいんじゃない」