気付いちゃった。
 あたし、財前のこと好きだなあ、と本人を目の前にしていったらひどく怪訝な顔をされた。ちょっとは嬉しそうにしたらどうなんだと思いながらも「あほか」と毒づく財前ににっこり笑いかけた。

「だから財前が好きだなあって」
「どういう意味や」
「どうって、そのまま?」
「あほ」

 まったく照れる素振りを見せない財前は食べかけていたぜんざいを机の上に置いた。遠くで蝉の声がする。ああそういえばここは学校だった。
 教室に人がいないのは、今日は一、二年は早く終わる日で、財前がここにいるのは、部活をやるからと先輩たちを待っているせいだった。(ほかの部活のひとたちなんてほとんどやっていないのに)
 そういう部活に熱心なところも好きだなあと思う。でもこれは友情なのだとも心のどこかで感じていた。

「財前はねー、だあーいすきな友達なのー」
「は」
「なんてゆうかねー、友愛? そんな感じで好きー」
「……ふーん」

 プラスチックのスプーンをくわえながらつまらなそうな顔をした財前は、机にべたりと体を張り付けるあたしの頭を撫で始めた。撫で、え?

「なに」
「お前なあ、」
「うん」
「俺のことどう思ってるん」
「だからすき、」
「俺、男やぞ」
「知ってる」
「……はあ」

 最後に頭をぱちんとはたいて手は離れていった。なんでだろうどきどきする。そういえば財前はあたしよりぜんぜん背が高くて声も低くて、今さっきまであたしをさわっていた手はあたしのよりずっと大きい。顔がかああっと熱くなって、財前は笑いながら「顔、赤」といった。

「おい」
「うん?」
「お前、それほんまに友愛なんか」
「……たぶん、違うかも」


「たぶん違うかも」