でれっとユウジ

 せっかく部活もないというのに、小春ちゃんと遊ぶ、といってデートを断られてしまった。やるせない気持ちで起きたのはもうお昼すぎ。なにもやる気がしなくて、もう今日は寝てすごしてやるー、と思っているところで携帯がなった。なんだよう、ディスプレイをよく確認もしないで出る。聞こえてきたのはユウジの声だった。

「お前いまどこや」
「家だけど」
「ならでてこいや。来てやったで」

 なんだその言い方。むっとしたので嫌味たっぷりにいってやった。

「ただいま居留守しておりまーす」
「なんやねん、それ」
「小春ちゃんにでもふられたんですかー」
「ふられてへんわあほ。せっかくお前にあいたくなったから来てやったんに」
「え、小春ちゃんと予定あったのに?」
「午前中に済ませた。……なあ、ちょっとくらい顔みせてや」
「あ、鍵なら、あいてる」

 そういったらぶちっと電話を切られた。次いで乱暴にドアを開ける音、どたどたとこっちに近づいてくる足音が聞こえる。気がついたらユウジはもう目の前まできていた。

「あいてるんなら最初っからそういえや!」
「デレたユウジとか超貴重……」
「忘れろ!」
「いや無理だなー」
「っちゅーか鍵くらいかけえや。無用心な」
「心配?」
「あたりまえや、あほ」

 そういって抱きしめるから、さっきまでの憂鬱な気分なんてふっとんで。あー、今日はしあわせな日だなあ、なんて思った。


「ただいま居留守しておりまーす」