こいのはじまり

 パソコンでいろいろとやっていたら開けっ放しのカーテンの外はもう暗くなってしまっていた。ぐっと伸びをすると背骨がぽきぽきと音を立てる。暇だし、コンビニでも行こう、と思って、俺は家を出た。

 家の近くのコンビニだし、と眼鏡をかけていったのが運のつきだったような気がする。ぜんざいを買おうとして手を伸ばしたらいきなり声を掛けられた。この声はよく覚えている。いつもいつもうるさいからだ。無視しようかとも思ったけれど「財前だよね!? え、もしかして人違い!?」とかやって慌ててるから仕方なく返事をすることにした。

「他にだれがおるん」
「あ、やっぱ財前だ」
「ぎゃあぎゃあうっさいねんお前」
「だって眼鏡してるのめずらしいなーって」
「さっきまでパソコンいじってたからな」
「へー」
「で?」
「ん?」
「なんか用なん」
「いや別に」

 雑誌買いに来たら財前がいたから、とはいった。の手には雑誌が一冊、それにたけのこの里があった。そういえば今日は一日だった、と思い出す。

「毎月来てるんだよー、この雑誌買うために」
「ふーん」

 そうしては「じゃあまた学校でね」と言って先にレジへ向う。俺も買うものはもうそろったのでレジへ行った。となりのレジでは男の店員とが仲良さそうに話している。

「今月もきたねー」
「あったりまえですよー、毎月楽しみなんですから」
「俺、最近は一日のこの時間バイトいれるようにしてんですよ」
「そうなんですかー」
「うん、で、もうすぐ終わりやねん、だからな」

 もう商品もわたし終わっているのにまだ話を続けている男の視線はあきらかにを狙っていた。それがなんとなく不愉快で、商品を受け取るとすぐにとなりのレジへ行った。の手を掴んで「はよ行くで」といってひっぱっていく。
 コンビニを出て少し歩いてから手を離した。は驚いた顔をしてぼーっとしている。俺が「お前、あの男とつきおうてるんか」と聞くとはものすごい勢いで顔を横にふった。

「ありえないって、あの人高校生だし」
「けど、向こうは狙ってたやん」
「うそ」
「うそやない」
「えー、なんかもうあのコンビニいけない」
「いかなかったらええやん」
「うー、そだねー……ってゆうかさ」
「なんや」
「あたしこのへんの道わかんないから途中まで送ってって」
「うわめんどくさっ」

 めんどくさい、と思ったけれど、の格好(キャミソールとハーフパンツ)とあたりの暗さを見て「ま、ええけど」と返事をした。


「ま、いいけどさ」