ドリーム小説  なんとなく外に出たくなって、部屋のドアを開ければ満天の星空だった。あんまりにもその光がきれいすぎてなんだかさみしくなる。ふと、さんのことを思い出した。どこから連想したのかはわからないけれどすごくさんにあいたくなって、気がついたら俺の足はすでにさんの家へ歩き出していた。

 閑静な住宅街に俺の下駄の音が響く。人通りはまるでない。もうほとんどの家が明かりを消していた。そういえば家を出る前に見た時計はもう夜中近くを指していたかもしれない。
 上を見あげればあいかわらずのきれいな星空。こんな夜はひさしぶりだ。最近は星なんて見えなかったから。
 いつの間にか止まっていた足を動かす。また下駄の音が響きだした。

 さん。さんはちいちゃくてかわいい。本人にそういうと拗ねるけれど。あと折れそうなくらいに細っこい。それなのにあの濃いメンバーの中でも存在がはっきりしている。それが俺のなかだけかほかのひともそう思っているかはわからない。でもできたら俺だけがいいなあ。
 さんの雰囲気が好きだ。あのふわふわしてぽわーっとしてるところ。あと俺の名前を呼ぶあの声。できたら千歳くん、じゃなくて千里くん、て呼んでほしい。

 途中で通り過ぎた公園には桜が満開だった。きっとあの下で寝たら気持ちいいんだろうなあ。からん、からん、という音に車の音が混じる。車は桜を舞上げて去って行った。
 コンビニを通り過ぎればすぐそこがさんの家だ。もうすぐそこに家が見える。さんの部屋はまだ電気がついていた。

 さんの部屋は一階にあった。前に一度おじゃましたことがあるけど、すごいいいにおいのするかわいい部屋だった。明かりが漏れるその窓の前に立つ。こんこん、と叩くと、すこしだけカーテンが開いた。
 つぎに窓も開いて、さんの部屋のいいにおいが鼻をくすぐる。電気のひかりがすこし目に痛かった。

「千歳くん」
「こんばんはー」

 さんはすこし驚いたみたいで、けど全然迷惑そうな顔なんてしていなかった。どうしたの、ってさんがいうから、星がきれいだよ、っていった。そうしたらさんは窓から顔を出して空を見上げる。そして、ほんと、きれいだね、といってわらった。

さん」
「んー?」
「俺ね」

 さんのこと、すき。
 そういうとさんはわらって、わたしも、千歳くんがすきだよ、なんていうから、俺はこのままさんを攫っていきたくなってしまった。

今夜は星がきれいだからきみを攫いにいくよ